
同軸落射照明とは?原理と仕組み・得意なワークから選定の注意点まで解説

同軸落射照明とは、カメラのレンズと同じ光軸(同軸)上から光を照射し、鏡面や光沢のあるワーク(検査対象物)の正反射光を捉えて表面状態を鮮明に観察する画像処理用照明です。金属・ガラス・フィルムなどの微細なキズや刻印、打痕を強調する外観検査に不可欠な光源として広く活用されています。
「金属の表面がテカってキズが見えない」「ワークに落ち込みやくぼみがあり、斜めからの光では影になって写らない」といった外観検査・画像処理のトラブルに悩んでいませんか?
光沢面や立体構造を持つワークの検査において、一般的なリング照明やバー照明では均一な撮像が難しく、欠陥の見落としにつながるケースが少なくありません。こうした課題を解決する強力な選択肢が「同軸落射照明」です。この記事では、同軸落射照明の原理や得意なワーク、現場でよくある選定の注意点まで、照明メーカーの視点からわかりやすく解説します。
- 同軸落射照明はカメラと同軸で光を当て、正反射光で平滑面を明瞭に映し出す仕組み
- 鏡面金属・光沢フィルム・くぼみのあるワークの外観検査で圧倒的な威力を発揮する
- 単体での過信は厳禁!ワーク形状によっては屈折による影響や他照明との併用検討が不可欠
同軸落射照明とは?原理と仕組みをわかりやすく解説

カメラと同軸(同じ光軸)で光を照射する基本原理
同軸落射照明(どうじくらくしゃしょうめい)とは、LED光源からの光を内部のハーフミラーに反射させ、カメラの撮影軸と同じ方向から垂直にワーク(検査対象物)へ照射する照明手法です。
平滑な鏡面ワークに垂直に当たった光は、そのまま垂直に反射してカメラに入射します(明視野観察)。このとき、ワークの表面が完全に平らであればカメラには明るく(白く)写ります。一方で、表面にキズ・打痕・傾斜・凹凸があると、その部分に当たった光は散乱・屈折してカメラに入ってこなくなります。その結果、「平らな部分は白く、キズや傾斜部分は黒くくっきりと浮き出る」という高いコントラストの画像を得ることができるのです。
透過照明・側射(リング)照明との見え方の決定的な違い
外観検査でよく使われる代表的な照明(透過照明・リング照明)と同軸落射照明では、光の当たり方と得られる画像の特徴が大きく異なります。
| 照明の種類 | 照射方向・仕組み | 得意な観察・検査内容 | 画像の特徴 |
|---|---|---|---|
| 同軸落射照明 | カメラと同軸(正面・垂直)から照射 | 鏡面・金属・フィルム・くぼみ内の表面検査 | 平滑面は明るく、キズや傾斜部が黒く写る |
| 透過照明(面照明) | ワークの背面(裏側)から照射 | 輪郭形状・寸法測定・透明体のピンホール検査 | ワークが黒いシルエット(影)として写る |
| 側射照明(リング・バー) | ワークの斜め上方や横方向から照射 | 一般的な基板検査・凹凸の強調・エッジ検出 | 立体感が出るが、鏡面では白飛びや影が発生 |
例えば、鏡面仕上げの金属板にリング照明(側射照明)を照射すると、光が正反射してカメラの方向に逃げてしまい、視野の一部だけが強く白飛び(ハレーション)したり、逆に全体が暗くなったりします。一方、同軸落射照明を使用すれば、全面から正反射光を取り込めるため、正反射物体であってもテカリを抑えた均一な撮像が可能になります。
同軸落射照明が威力を発揮するワーク・検査対象

同軸落射照明は、表面が平滑で正反射を起こしやすいワーク(検査対象物)の検査において、他の照明では真似できない鮮明な画像を作り出します。ここでは、同軸落射照明がどのような現場で威力を発揮するのか、具体的な適用事例を交えて紹介します。
鏡面・金属・ガラス表面の微細なキズ・打痕・歪み検査
同軸落射照明が最も得意とするのが、鏡面仕上げされた金属板、ウエハ、ガラス、シリコン基板などの平滑面の検査です。
例えば、金属研磨面の浅いキズや小さな打痕(凹み)を観察する場合、リング照明などの側射光では光が逃げてしまったり、強烈なテカリ(ハレーション)によってキズが消えてしまったりします。しかし同軸落射照明を使用すれば、平滑部分は正面からの光をそのまま正反射して均一に明るく写り、キズや打痕のエッジ部分だけが光を乱反射・散乱させるため、黒い影として浮き上がります。
また、カテーテル先端のような山なり・球状の部位を持つ医療用部材においても、一般的なリング照明では局所的なハレーションが発生しがちですが、同軸落射照明を用いて個別調光を行うことで、均一性の高い光を照射して欠陥を捉えやすくなります。
光沢フィルム・ウェハ・基板の印字・パターン検査
表面に光沢があるフィルムや、精密な回路が形成された半導体ウエハ・基板上の印字検査(OCR/OCV)にも最適です。
特に透明・白色のフィルム検査においては、側射照明では捉えきれない以下のような微細な欠陥が問題となります。
- スジ・シミ・乾燥ムラ
- あばた模様(微細な凹凸不良)
- 流パラ模様(流れ模様)
こうした多岐にわたる欠陥項目に対し、同軸落射照明を適用することでフィルム表面のわずかな歪みや乱反射を捉え、すべての不良項目を最もクリアに見やすく可視化できたケースがあります。
また、コネクタの奥まった部分やハンコ(印面)のような「くぼみ」があるワークにも効果的です。バー照明など斜めからの光では、くぼみの周囲が壁となって影になり、底面まで光が届きません。カメラと同じ光軸で上から垂直に光を流し込む同軸落射照明であれば、くぼみ内部の底面まで均一に照らすことができ、内部の汚れや異物・印字をクリアに撮像できます。
同軸落射照明に向かない対象物と注意点
一方で、同軸落射照明が万能というわけではありません。対象物の表面状態や立体形状によっては、期待したようなコントラストが得られない、あるいは他の問題が発生することがあります。
例えば、粗い鋳物肌や紙、布のように「光を散乱させる拡散反射物」に対しては、正反射光が戻ってこないため同軸落射照明の効果が出にくくなります。このようなワークには、リング照明やローアングル照明が適しています。
また、樹脂成形品の突起部などを撮像する際、同軸落射照明を単体で使用すると突起のR(曲面)部分が光を逃がして黒く強調される傾向があります。エッジのコントラストを強調したい場合には有効ですが、全体を均一に見たい場合には不向きです。このような場合は、疑似同軸照明やスポット同軸照明を組み合わせるなど、複数のライティング手法を検討する必要があります。
【照明メーカー目線】同軸落射照明の選定でよくある失敗と対策

「正反射物には同軸落射照明」というセオリー通りに導入したものの、期待通りの画像が得られないという相談は後を絶ちません。照明メーカーの視点から、現場でよく発生するトラブルの原因と具体的な解決策を解説します。
ハレーション(光の映り込み)が発生したときの解決策
同軸落射照明を導入しても、ワークの材質や表面状態によっては局部的なハレーション(強い光の映り込み・白飛び)が発生し、欠陥が見えなくなることがあります。
例えば銅板の表面検査において、同軸落射照明単体だけではキズや打痕などのあらゆる種類の欠陥を網羅して照射することが難しいケースがあります。ハレーションや光の逃げが発生した場合は、以下のようなアプローチが有効です。
- 個別調光機能の活用:LEDの調光レベルを調整し、正反射光の光量を適切に減衰させる。
- 照明手法の併用・切り替え:バー照明やリング照明を追加設置し、同軸光と斜光を組み合わせる、あるいはカメラを斜めに設置して撮像する。
- 他照明への置き換え:必ずしも高額な同軸落射照明を使わなくても、ローアングルリング照明などで浅い角度から照射することで、目的のキズが鮮明に浮かび上がる場合もある。
ワークの曲率・傾きによる「光抜け」の落とし穴
>同軸落射照明は「完全な水平・平滑面」に対して高い効果を発揮します。そのため、ワークにわずかな「傾き」や「曲率(R形状)」が存在すると、正反射した光がカメラレンズの視野外へ逃げてしまう「光抜け」現象が発生し、視野の一部が黒く落ち込んでしまう落とし穴があります。
また、光学的な構造上の注意点も存在します。同軸落射照明の内部にはハーフミラーが内蔵されていますが、ミラーの厚みの分だけ光が屈折するため、レンズやワークの組み合わせによっては画像の鮮明度(解像度)が若干低下する場合があります。さらに、ハーフミラー構造を含むため製品構造が複雑になり、他の一般的な照明(リング・バー等)と比較して導入コストが高価になりやすいという点も考慮する必要があります。
デモ機・テスト撮像を活用して一発選定を防ぐ重要性
外観検査の自動化において、机上の計算やスペック比較だけで照明を一発選定するのは非常に危険です。
照明選定においては、同軸落射照明を単体で使用するだけでなく、他の照明(バー・リング・ローアングル等)と組み合わせたり、工程ごとに切り替えて照射したりすることで、より多くのキズを見やすくするアプローチが一般的です。
自社ワークで最適な撮像環境を構築するためには、多種多様な照明機材が揃い、ライティング知識が豊富な技術スタッフが在籍する照明メーカーの実験専用ラボ(テストルーム)を活用し、事前検証(テスト撮像)を行うことが最も確実な近道となります。
よくあるご質問

同軸落射照明とは何ですか?
同軸落射照明とは、カメラの撮影軸(光軸)と同じ方向から垂直に光を照射する画像処理用LED照明です。照明内部のハーフミラーを介して光を当てる構造になっており、正反射する平滑面を明るく写し、表面のキズや傾斜・凹凸部分を黒く浮かび上がらせることができます。鏡面金属やガラス、フィルムなどの外観検査で広く利用されています。
リング照明と同軸照明の違いは何ですか?
大きな違いは「光の照射角度(光軸)」と「正反射光の捉え方」です。リング照明はカメラレンズの周り(斜め上方)から光を当てるため、ワークに立体感を出したり凹凸のエッジを検出したりするのに長けています。一方、同軸照明はカメラの真上(正面)から垂直に光を流し込むため、鏡面ワークであってもハレーション(テカリ)を抑え、表面の微細な打痕や印字、くぼみ内部を均一に映し出すことができます。
同軸光とはどういう意味ですか?
同軸光とは、カメラレンズの光軸(視線)と、照明から照射される光の軸が「同じ直線上に重なっている光」という意味です。カメラと同じ視点から光を当てることで、ワークの影ができにくくなり、正反射体を均一に明るく撮像することが可能になります。
疑似同軸照明とは何ですか?
疑似同軸照明とは、専用の同軸プリズムや複雑な光学系を使わず、同軸に近い照明状態を実現する構成の照明です。
まとめ:ワークに適した照明選定が外観検査成功の鍵

同軸落射照明は、カメラと同軸から光を照射することで正反射光を捉え、鏡面金属・ガラス・フィルム・くぼみ内部などの欠陥を鮮明に浮き上がらせる非常に強力な照明手法です。
しかし、万能な照明は存在しません。ワークのわずかな傾きや曲率(R形状)による光抜け、ハーフミラーの屈折による鮮明度への影響など、同軸落射照明単体では対応しきれない場面も存在します。自動外観検査(画像処理)を成功に導くためには、以下のステップを踏んだ慎重な選定が欠かせません。
- ワークの表面状態(正反射物か拡散反射物か)を正しく把握しているか
- 同軸落射照明だけでなく、ローアングルやバー照明等との比較・組み合わせを検討したか
- 導入前に実験ラボやデモ機貸出を利用し、実ワークでのテスト撮像を行ったか
画像処理検査においては、「照明で撮像できていない欠陥は、どれほど優れたカメラやAIソフトウェアを用いても判定できない」のが普遍の原則です。だからこそ、撮像環境づくり(ライティング)の妥協は厳禁です。
「自社のワークに同軸落射照明が合っているか分からない」「ハレーションが消えず欠陥が見えない」とお悩みの方は、豊富な照明ラインナップやテストルーム(実験ラボ)、デモ機貸出制度を備えた照明メーカーへお気軽にご相談ください。多様なライティング技術を活用して、最適な撮像条件の構築をサポートいたします。
実際のワークをお預かりしてのテスト撮像は、お問い合わせフォームより承っております。